kashiwabara007
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昭和三十五年のある月にこのアルバムを貼布し終わって今年四〇年幾度びか展げては過ぎし日の思出を見つけて来た。のど元すぎれば熱さ忘れるの譬、決して軍国時代を是としたりするものではないが唯思出におぼれた点もないではない 他方その後の日本社会、国家の変転は唯混乱無秩序の敗戦直後から世界の驚異といわれる復興と戦前を凌駕する生活の裏側に今尚矛盾と混乱と無秩序が政治に経済に全社会生活にはびこり消費の蔭に今尚日蔭のまゝ救われない人々が無数である 戦後二〇年、今日昭和四〇年八月十五日、われらは終戦二〇周年を迎え、反省なき政治と、三次世界大戦の危険をはらむベトナム戦争を国際情勢の中に戦に没した三百八十万の英霊にしづかに黙祷を捧げ白日を迎えた かえりみて日々これ中国語で言うマーマー沒法子の時の流れに対する態度と戦争のギセイとなって、今尚悲惨な生活にある人々のことを忘失している態度-平和を平和と感ぜずこれを軽々に見逃し有難くとも思わざる因であり結果であるこの態度を強く戒まねばならない。個人的な公私生活の渦の中に無反省無批判、思想無き日々と送り迎えるのみの姿はやがてまたなすすべもなく戦の渦中にひきずりこまれる因となろう 終戦二〇周年、マスコミは筆を携えてその足跡を活字にしテレビ、ラヂオもすぎし日を思出さしめようとしている他のすべてを措き、戦争のギセイになった数多いであろう人々のわれらに否われに沈思せよと鉄槌を下だしたかの感ある朝日新聞の報告をこゝにとりあげて戒とするとともに今日二〇周年の敗戦記念日を反省の契機としたいと思う 併せてこの記事の老婆に幸めぐれと祈りたい

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