atoingashu003
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 ●歸り道(山東にて) 僅かな利潤を日用品に替へて町から歸る父の顔には言ひ知れない微笑が浮く、迎ひに出た愛兒と飼犬が無邪氣にまといつく。この自然に溶け入るような純粋な幸福もそれはほんの瞬間に許された喜びだ。脊後には打ち續く戰爭に搾取される丈け搾取された殘滓の極貧生活が陰惨にひかへてゐる。革命的な社會轉機が案外こんな土着の農民階級の忍從のうちに信仰のように根強く醞醸されてゐるかも知れない。 (印畫の複製を嚴禁す)//●帰り道(山東にて) 僅かな利潤を日用品に替へて町から帰る父の顔には言ひ知れない微笑が浮く、迎ひに出た愛児と飼犬が無邪気にまといつく。この自然に溶け入るような純粋な幸福もそれはほんの瞬間に許された喜びだ。脊後には打ち続く戦争に搾取される丈け搾取された残滓の極貧生活が陰惨にひかへてゐる。革命的な社会転機が案外こんな土着の農民階級の忍従のうちに信仰のように根強く醞醸されてゐるかも知れない。 (印画の複製を厳禁す)

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