atoingashu004
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●法悦の老媼(浙江省) 蒼古として香煙立ち迷ふ大圓通殿の本堂内では、木魚の音につれて唱へられる讀經の聲が恐ろしく南方音の響のあるのも怪しむに足らぬ、須爾壇の前に林立して供へられた蠟燭の中に、それはまた如何にももの(もの)しい朱紅の大蠟燭に寄進者の省名や人名など金文字で麗々と書いたのも支那らしい。 遠い山東のはてから一生の思出に春の彼岸の普陀山詣に渡り來れる老媼が、赤褐色に染めた麻の法衣をまとふて、法悦に輝く面もちして唱名合掌の姿も神々しいではないか。 (印畫の複製を嚴禁す)//●法悦の老媼(浙江省) 蒼古として香煙立ち迷ふ大円通殿の本堂内では、木魚の音につれて唱へられる読経の声が恐ろしく南方音の響のあるのも怪しむに足らぬ、須爾壇の前に林立して供へられた蝋燭の中に、それはまた如何にももの(もの)しい朱紅の大蝋燭に寄進者の省名や人名など金文字で麗々と書いたのも支那らしい。 遠い山東のはてから一生の思出に春の彼岸の普陀山詣に渡り来れる老媼が、赤褐色に染めた麻の法衣をまとふて、法悦に輝く面もちして唱名合掌の姿も神々しいではないか。 (印画の複製を厳禁す)

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