atoingashu006
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●不安な假睡(遼西地方) 憩ふ間も去らぬ生命の不安に、片時として夢まどろむ暇もない。一歩門外に出づれば、彼等のためには皆敵ばかりだ。イザと言へば立たねばならぬ。武裝のまゝ鞋も脱かずに暖かい炕の上にゴロ寢の假睡、僅かに與へられた六尺の天地、これが今宵一夜の極樂淨土だ。然し手に銃をしかと握つたまゝ放さぬ、寢ても氣が許されぬとはこのことだ。一つ間違へば命の取引をせねばならぬ、哀れ兵匪の渡世の味氣なさ、はたで見る程樂ではない。 (印畫の複製を嚴禁す)//●不安な仮睡(遼西地方) 憩ふ間も去らぬ生命の不安に、片時として夢まどろむ暇もない。一歩門外に出づれば、彼等のためには皆敵ばかりだ。イザと言へば立たねばならぬ。武装のまゝ鞋も脱かずに暖かい炕の上にゴロ寝の仮睡、僅かに与へられた六尺の天地、これが今宵一夜の極楽浄土だ。然し手に銃をしかと握つたまゝ放さぬ、寝ても気が許されぬとはこのことだ。一つ間違へば命の取引をせねばならぬ、哀れ兵匪の渡世の味気なさ、はたで見る程楽ではない。 (印画の複製を厳禁す)

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