atoingashu008
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●春淺し(山海關附近) 山海關附近の丘陵を歩いて居ると珍らしい松原に出遇つた。未だ枝も寂しく桂にからまれた巨木の幹に吊された古鐘の下には名もないものだろう古びた廟が鎭座して居た。かつてはこの絕域に征馬を進め樹梢に響く暮の鐘に戎衣を沽ほし幽林に風をはかなんだ昔も愢ばれるが、無心の鐘に人の世の移ろひを尋ぬるよすがもない。 (印畵の複製を嚴禁す)//●春浅し(山海関附近) 山海関附近の丘陵を歩いて居ると珍らしい松原に出遇つた。未だ枝も寂しく桂にからまれた巨木の幹に吊された古鐘の下には名もないものだろう古びた廟が鎮座して居た。かつてはこの絶域に征馬を進め樹梢に響く暮の鐘に戎衣を沽ほし幽林に風をはかなんだ昔も愢ばれるが、無心の鐘に人の世の移ろひを尋ぬるよすがもない。 (印画の複製を厳禁す)

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