ajiataikan010
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鰯//鰯//秋の淸津は、鰯の街だ。沿岸航路の波止場が、鰯の山で足の踏場もない。海水は、魚血と脂で粘液のやうな光を反射させてゐる。この愛すべき銀鱗は、市民の味覺からはおよそ緣遠きもの、三十万圓の鰯は、シヨベルで四斗樽へ一杯二圓、更に七杯が牛車に積まれて夜半も街裡を郊外へ運ばれ、あらゆる郊外が鰯の搾粕の作製に利用されてゐる。―秋の淸津では、旅客は驛に着くと、すぐ鰯の匂いを知るであらう。(印畫の複製を禁ず)//秋の清津は、鰯の街だ。沿岸航路の波止場が、鰯の山で足の踏場もない。海水は、魚血と脂で粘液のやうな光を反射させてゐる。この愛すべき銀鱗は、市民の味覚からはおよそ縁遠きもの、三十万円の鰯は、シヨベルで四斗樽へ一杯二円、更に七杯が牛車に積まれて夜半も街裡を郊外へ運ばれ、あらゆる郊外が鰯の搾粕の作製に利用されてゐる。―秋の清津では、旅客は駅に着くと、すぐ鰯の匂いを知るであらう。(印画の複製を禁ず)//

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