日本語 English 简体中文 繁體中文

現代中国研究資料室について
研究・調査活動
データベース


ウェブ検索 サイト内検索

研究・調査活動ー調査・交流報告

2008年夏期・中国出張

【期間】2008年8月21日から2008年9月3日

【地域】中華人民共和国江蘇省、浙江省

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】2008年夏、江南地域の地方図書館を訪問・調査した。

■ 蘇州博物館
    8月22日に蘇州博物館を訪問し、資料部主任の金先生及びデジタル化担当の副館長茅先生が対応してくださった。
    博物館が所蔵している資料は、蘇州の地方文献である。主に、線装本、家譜、金拓文などで、購入していることはなく、寄贈のみでコレクションの構築を行っている。その中でも重要なものは、蘇州の文人の家譜であり、博物館では120種余り所蔵している。博物館ではこれをスキャニングし、デジタル画像として利用者に公開している。システムとしては档案管理システムを使っている。名前と題名で検索できるが、館外あるいはネットでは公開していない、とのことである。 家譜の公開、スキャンニングで最も重要な問題は著作権の管理である。これは利用者に対しては、1/3を超えてコピーが出来ないなどという規定に表れている。現在、著作権問題は蘇州大学と協力して対処しているが、今後この方面に関する専門的人材を養成する必要を感じているとのことである。また昨年、文化部の下に、全国古籍保護中心が設立され、目録の編集と版本の管理を行っている。 家譜を調べる人は少なくないが、大きく二種類に分けられる。それは歴史研究者と個人的に興味を持っている人である。
    スキャンニングの問題としては、スキャンニングの時に壊してしまう恐れがある、という問題を感じているとのことである。またスキャンニングを行ううえでは、出版可能な基準でスキャンニングを行っており、出版もしたいが、出版を行う費用が無いとのこと。原ファイルはカラー、300dpiでスキャンニングされたTIF形式で保存される(1ファイルは50~60MBになる)。これをJPEGに変換し、デジタルライブラリではこれを利用しているとのことである。

■ 淳安県図書館
    8月27日には、淳安県図書館を訪問した。図書館は、国家二級図書館で、約10万冊の蔵書を持っている。一年の経費は約20万元(本や定期刊行物の購入費を含む)、また寄贈もあるとのことである。定期刊行物は大衆的、一般的であるかどうかで定期購読をするかどうかを決めている。つまり、研究図書館的な指向というよりは、大衆にサービス〔面向大衆〕するということを基本的なポリシーとしている。バスによる出張図書館サービス〔流動図書館〕も行っており、貸し出しで人気のあるジャンルは経済関係、健康関係〔養生類〕、サクセス・人生指南本〔励志類〕である。
    淳安県は行政的に杭州市の下に所属しており、図書館間貸借(ILL)が可能なように、杭州市図書館のデータベースに登録を行っている。とはいえ、ILLについては定期的に行っているわけではなく、淳安県図書館に人が来るときに、ついでに持ってきてもらう、というような形で行っている、とのことである。
    貴重書庫には淳安県に関する地方文献が所蔵されているが、定期刊行物は1963年以降のものが主要なものであり、水没前、建国前の資料はあまり多くない。

■ 紹興図書館
    8月29日、紹興図書館の地方文献資料室を訪問した。地方文献資料室は、紹興出身者が書いた書籍と、紹興について書かれたものについて収集を行う機関である。大きく古籍近代部門と現代部門に分かれており、前者は訪問時改装中で利用不可であった。前者は約1000タイトル、四庫分類で分けられており、そのなかで最も多いのは集類、史類であるという。現代部門は、文学、歴史地理、経済、地図(1902年のもの及び民国時期のもの5種類)、拓片、民国時期雑誌のマイクロフィルムなどである。
    コレクションのなかでは、仏教文化、庭園関係、中国医学などに注力しており、版に注意しているとのこと。教育関係の資料については、善本が200タイトル近くあるが、学校の出版物については所蔵していないが、地方教育の雑誌である『紹興教育』は所蔵している、また最近は家譜研究が比較的盛んであるとのことだった(なお民国時期以降の新聞は档案館が所蔵しているとのこと)。この他特殊コレクションとしては、紹興酒〔黄酒〕、書道などがある。
    現代部門については全て開架である。但し、線装本については、古籍書庫に入っている。またネットで書誌情報を調べることもでき、また古籍はカード及び分類目録がある。蔵書は全部で13000冊、そのうち古籍が5000~5500冊あまり、現代が7000~7500冊あまりである。機関や機構の発行した刊行物についても収集している。収集(寄贈)の過程では5名の連絡員がおり、それぞれ教育、档案、社会科学など専門分野がある。その他、民間からの寄贈も多いとのことだった。専任職員としては、図書館の特殊文献部に5名の専任職員が所属しており、そのうち古籍担当が2名、地方文献担当が1名おり、また古籍の修復についても専任の職員がいるとのことだった。
    データベースとしては、全文検索(方志)、マルチメディア検索(戯曲)、書目検索(家譜、拓片)などがあり、館内閲覧を原則としている。主な使用者は、地方史の編集者〔方志工作者〕と海外の研究者(日本、ドイツ、アメリカ、台湾、韓国など)である。
    現在、『紹興図書館蔵地方文献目録』を作成中であり、古籍・近代については今年末の出版を目指しているとのこと。

■ 浙江図書館古籍部
    8月30日には、西湖のほとりにある浙江図書館古籍部を訪問した。浙江図書館には古籍部のほか、旧館、新館、蔵書楼がある。古籍部には、一般的な古籍(家譜など。善本は浙江図書館新館に保存されている)や、民国時期の書籍・期刊が保存されており、蔵書数は新聞・定期刊行物・書籍すべて含めて約6000あまりタイトル、20万冊強にのぼるという。新聞については、マイクロフィルムで読者に提供しており、国・省レベルの大規模のものが50タイトル、小規模な新聞は200タイトルほど所蔵されているとのことである。マイクロ化も館内で館員が行っており、新聞は35㎜の、定期刊行物は16㎜のマイクロフィルムに記録されるとのことであった。また専門の修復人員が5名おり、そのなかの2名は昨年配属されたとのことである。これは近年中国政府が古典籍の保護・維持管理に力を入れ始めていることが関係していると言えるだろう。
閲覧する場合、請求した図書が原書の場合、5角の資料保護費が請求される(リプリントの資料も所蔵しており、これを請求した場合は費用が不要である)。

    また、浙江図書館のウェブサイトから電子図書館のデータベースへアクセスすることができる。以下のデータベースに館内からアクセスできるようになっている。
・文淵閣『四庫全書』
・天方有声(朗読してくれるデジタルライブラリ)
・中国基本古籍庫(1998年からサービス開始、20億字、2000万ページ)
・龍語翰堂典籍数字庫(UCS-4を使用し、異体字漢字の問題を解決したデジタルライブラリ)
・中国大百科全書(ネット版)
・OCLCNetLibrary
その他、民間で有料のデジタルライブラリ(超星、書生之家、方正Apabiなど)へのリンクもある

清史編纂プロジェクト研究員との交流

    中華人民共和国の国家清史編纂プロジェクトの史料調査のため来日中の、李長莉(中国社会科学院近代史研究所)氏が、2008年7月11日に当資料室を訪問しました。現代中国地域研究プログラム及び当資料室の紹介、国家清史編纂プロジェクトにおける画像アーカイブ計画についての意見交換などを行いました

2008年春期・モンゴル出張

【期間】2008年6月22日〜2008年6月27日

【地域】モンゴル国ウランバートル市

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
    Sekiguchi Global Research Association(SGRA)及びモンゴル国家文書局より招聘され、6月23日から25日まで開催されたSGRA及び文書局共催の国際シンポジウム「Global Order from the Perspective of Archives, History Literature, and Media: Focus on North East Asian Society(歴史・文学・メディア・アーカイブズからみたグローバル秩序:北東アジア社会を中心に)」に出席し、「Digitizing Asian Historical Resource Projects in Japan: the present condition and the problems(日本におけるアジア歴史資料のデジタル化:現状と問題点)」という報告を行い、あわせて日・蒙・中・米・露・豪等の研究者と交流を行った。スケジュールは以下の通りであった。

6月22日…東京→北京(一泊)
6月23日…北京→ウランバートル。会議への登録。
6月24日…午前は開会式、招待講演。午後は分科会ごと(歴史・文学・メディア・アーカイブス)に分かれての発表・討論。出張者はアーカイブスセッションに出席・発表。夜は懇親会。発表者以外にも、モンゴル国政府関係者や駐蒙日本大使館関係者なども出席。
6月25日…午前は総括討論、閉会式。午後はエクスカーション。
6月26日…ウランバートル→北京。天候による遅延のため一泊。
6月27日…北京→東京。

2007年度における調査・交流活動

報告はこちらをご覧ください。
Copyright © 2007 Documentation Center for China Studies, The Toyo Bunko. All Rights Reserved.