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現代中国研究資料室について
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研究・調査活動ー調査・交流報告

2011年春期・中国における資料デジタル化・電子図書館視察

【期間】2011年3月13日〜2011年3月21日

【地域】中華人民共和国北京市・上海市・浙江省杭州市

【出張者】高田幸男(明治大学/東洋文庫)、田中仁(大阪大学/東洋文庫)、大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 3月13日より、北京・杭州・上海にある北京大学図書館、中国社会科学院近代史研究所、浙江大学図書館、浙江大学歴史系、上海図書館を訪問し、中国における資料デジタル化・電子図書館の現状と問題点について調査を行うとともに、東洋文庫及び地域研究事業の紹介を行い、各拠点をはじめとする日本の研究機関が持つ研究資源(人材・史料・経験)を中国側にアピールするなどの交流事業を行った。訪問した各館とも、館長・所長クラスが応対し、当拠点を日本での中国研究の図書館・資料収集面でのハブと見なしていることがわかる。詳細は、5月に行う予定の成果報告会で発表する予定であるが、以下では視察の簡単な紹介をしてみたい。

 3月14日には北京大学図書館を訪問した。北京大学図書館でのデジタル化は古典籍が中心であり、独自で行っているデジタル化以外で、学外で協力しているのは後述するCADALのみである。北京大学図書館では学内に子会社を持ち、その子会社が実際にデジタル化を行っている。とはいえ、デジタル化が完了したのは、デジタル化が必要な資料のうちまだ1割程度であるという。なお、子会社は図書館資料のデジタル化のみならず、大学における資料デジタル化全般を行っている。デジタル化の他、古典籍の修復と保存についても説明を受け、見学を行った。

 翌15日には、中国社会科学院近代史研究所を訪問した。近代史研究所では、まず中国の図書館におけるデジタル化の概況についてレクチャーを受けた。中国の電子図書館には資金や管理部門の関係から6つの系統に分けられ(①国家プロジェクト—国家図書館、清史編纂委員会など、②大学図書館—CADALなど、③科学院、④社会科学院、⑤公共図書館、⑥民間など)、系統内では協力しているが(CADALなど)、系統が異なると相互乗り入れせず、それぞれ独立してデジタル化を進めているという状況だという。その後、近代史研究所におけるデジタル資料の紹介があった。近代史研究所におけるデジタル化は書籍ではなく(現在申請中の社会科学院系統の「中国社会科学電子図書館」が資金を獲得したら別だが)、アーカイブが中心である。近代史研究所が独自に所蔵している胡適アーカイブ、張之洞を代表とする清末著名人物のアーカイブ、大連図書館旧所蔵満鉄新聞切り抜き資料、文革期壁新聞アーカイブが代表的なものである。このうち、胡適アーカイブは台湾の中央研究院所蔵の胡適関係資料のデジタルバージョンとの交換という形で協力関係を築いているという。この他、国民党党史館、台湾国史館、スタンフォード大学、コロンビア大学などとデジタル化で協力関係を結んでいるという。

 3月16日には、前夜に移動した杭州にある浙江大学図書館を訪問した。ここは前述したCADAL(China Academic Digital Associative Library)の中心館の1つであり、CADALプロジェクトが説明の中心となった。CADALは1999年に開始され、2009年に第一期が終了した。第一期は中国政府より、7000万人民元(約8億4千万円)、アメリカより200万ドル(約1億6千万)の資金が投入され、およそ100万アイテムにおよぶコンテンツをデジタル化したという。同時に、OCRのシステム化、デジタル化センターの建設、デジタル化のコストについても説明があった。なお続く第二期は2009年8月より開始され、参加機関の拡大、国外との協力体制の構築を目指しているという。既にアメリカのInternet ArchiveやAdobeとの協力実績があるという。最後に、浙江大学内に設置されたデジタル化センターを見学した。現在、浙江大学のCADALプロジェクトのデジタル化は主として深圳にある工場で行っているが、大学内でも作業スペースがある。そこでデジタル化に従事する作業者は約30名、一日100冊(2〜3万頁)のデジタル化を目標にしているという。

 17日には同じ浙江大学の歴史系を訪問した。ここは浙江省龍泉市にある地方法院アーカイブのデジタル化を独自に行っており、龍泉地方法院アーカイブの概要、整理状況などの説明があった。既にデジタル化は完了しているが、むしろ目録の整備がまだであるという。文革時期に一度整理されたものの、整理の仕方が悪かったため、アーカイブがバラバラの状態で、実物を1つずつみながら、目録を作らなくてはいけないが、人的・金銭的リソースが足りないとのことである。

 翌18日には、前夜に移動した上海にある、上海図書館の訪問見学を実施した。上海図書館は1995年に情報研究所と合併して現在に至っているため、デジタル化やデジタル情報の発信に力を入れている。民国時期の資料、特に雑誌資料についていえば、ほぼマイクロフィルム・デジタル化が終了しているとのことである。この他、上海図書館が構築した電子図書館プラットフォームや「全国報刊索引」データベースの紹介、電子書籍の貸し出し実験、書庫見学、デジタル化作業の見学などを実施した。

2011年春期・台湾出張

【期間】2011年3月1日〜2011年3月5日

【地域】台湾

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 台湾・高雄市にある中山大学で開催された国際シンポジウム「革命史、知識史與中国研究国際討論会(革命史、知識史と中国研究国際シンポジウム)」に参加し、オーラルヒストリーを中心とした東洋文庫拠点の資料研究の取り組み、及び日本における戦前日本の中国研究の研究成果についてのデジタル化の現状について、中国語で報告を行った。また、総合コメンテーターを務めた。大澤研究員の報告については、台湾側研究者から多くの質問が寄せられ、台湾側の、当拠点の取り組み及び日本における資料デジタル化に対して、台湾学術界が強い関心を示していることを感じ取ることができた。なお、シンポジウム参加に関する経費は、台湾側より提供された。

NIHU現代中国地域研究プログラム参加の若手研究者との交流

    NIHU現代中国地域研究プログラムの慶應義塾大学拠点に所属する島田美和(慶應義塾大学総合政策学部専任講師)及び京都大学拠点に所属する宮原佳昭(京都大学人文科学研究所産学官連携研究員、京都大学非常勤講師)の両名が、2011年2月24日に当資料室を訪問しました。中国における資料デジタル化の現状などについて意見交換等を行い、新本館見学を実施しました

2011年春期・上海出張

【期間】2011年2月11日〜2011年2月23日

【地域】中華人民共和国上海市・浙江省杭州市ほか

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 上海図書館にて、教育史関係の史料調査を行った。併せて、3月に実施予定の中国電子図書館視察に関する打ち合わせを、訪問予定の浙江大学図書館(浙江省杭州市)などと行った。

2010年秋期・台湾出張

【期間】2010年11月2日〜2010年11月7日

【地域】台湾

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 台湾の国家図書館で開催された「第八次中文文献資源共建共享合作会議(The 8th Conference on Cooperative Development and Sharing of Chinese Resources)」に参加するとともに、中央研究院近代史研究所図書館などで調査を行った。

 11月2日は、午後より台湾大学図書館において、「第八次中文文献資源共建共享合作会議」とジョイントした「学術図書館與数位資源研討会(学術リソースとデジタルリソース国際シンポジウム)」に参加した。

 最初の報告は東京大学東洋文化研究所の大木康教授により、「日本有関漢籍的数位資源」と題された報告がなされ、全国漢籍データベース、東洋文化研究所の漢籍目録、同じく東洋文化研究所の漢籍善本の全文画像データベースの紹介がなされた。その後北京大学の朱強館長から、「高校数字資源長期保存的挑戦與策略」と題した報告がなされ、中国における大学図書館のデジタル化についての状況を述べ、その後北京大学図書館でのデジタル化の状況について説明を行った。この説明によると、北京大学図書館でもっているデジタルリソースは、データベースの契約が500種類あまり、電子ジャーナルの契約が45000タイトルあまり、閲覧できる電子図書及び電子化された学位論文は260万冊、デジタル化された民国時期の図書などは12TBにのぼるという。その後、北京大学の肖瓏副館長から「大陸高校人文社会科学信息資源的共建共享」というタイトルで発表がなされ、CASHLというCALISの発展型サービスの紹介がなされた。三番目の報告はスタンフォード大学東アジア図書館の邵東方館長から「スタンフォード大学図書館デジタル化計画の新発展と動向」という報告がなされ、スタンフォード大学のSDR(Stanford University Digital Repository)の紹介やグーグルブックスの動向、地図コレクションの構築などが解説された。4番目の報告はコロンビア大学東アジア図書館の程健館長で、「中文デジタル資源のミッシング・リンク:オーディオ・ビジュアル資源」として、デジタルライブラリーにおいて、映画、音楽などの作品のデジタル化と公開が遅れていることを指摘した。5番目の報告は、清華大学図書館の多高瑄氏で、「中国科学技術史デジタル図書館の構築と研究」ということで、清華大学で進められている中国科学技術史デジタル図書館プロジェクトの紹介がなされた。6番目の報告は香港大学図書館の尹館長によるもので、「目録への回帰」というタイトルで、香港大学図書館におけるデジタル化の実践、具体的には目録にグーグルブックスへのリンクを付ける、OCLCにおける中国語書籍目録の入力・修正に力を入れていることなどを紹介した。最後の報告は、台湾大学図書館の郭グループリーダーによる「台湾大学図書館デジタルコレクションの現況」という報告で、台湾ではデジタル化の進展によって、台湾大学では、中国国民党史料資料庫、慈林教育基金会台湾社会運動史料など所蔵しないデジタルコレクションが増加していることなどを指摘した。

 3日は、国家図書館漢学研究センターで、「第八次中文文献資源共建共享合作会議(第8回中国語文献資源共同構築・シェアリング会議)」が開かれた。なお、一部報告は2日の報告と内容が類似しているため、ここでは省略する。午前中最初の報告は、中国国家図書館副館長の張氏で、「中国国家図書館中文数字典蔵及共享」というタイトルの報告であった。この報告によれば、国家図書館の特色あるデジタルリソースとしては、①中国語の古典籍と甲骨文資料、②敦煌文献、③民国文献、④中国語現代書の4つを挙げている。このうち、①中国語の古典籍と甲骨文資料で一番大きい問題となったのが外字処理で、50数万頁に及ぶ中国地方志デジタル化では5000字あまりが外字で、外字処理の策定から行ったという。また③民国文献については、酸性紙による劣化問題からの資料保護を目的として開始したマイクロフィルム化の作業が基になっていること、④中国語現代書ではやはり、著作権処理が問題になっていることを指摘した。またこの他、中国国家図書館ではインターネットリソースの保存、デジタル分館の建設、国際協力(国際敦煌プロジェクト、ワールドデジタルライブラリー、「全球中華尋根ネット」、ハーバード・イェンチン図書館との共同デジタル化)などを進めているという。午前中最後の発表は、、ハーバード・イェンチン図書館のチェン氏による「A Report on the Chinese Digitization Projects of the Harvard-Yenching Library at Harvard University」で、ハーバードイェンチン図書館で過去10年間に行ったデジタル化プロジェクトの概要が紹介された。すなわち、①モリソン写真コレクション、②ピケンズの中国ムスリムコレクション、③中国拓本コレクション、④明清女性著作コレクション、⑤民国時期図書コレクション、⑥ナシ語手稿、⑦朝鮮語レアブックス、⑧中国語レアブックス(プリンストン大学、議会図書館、中央研究院との共同計画、中国国家図書館との共同計画など)の9種類で、ハーバード大学のVIAから検索できるという。

 午後からは第2セッションが始まり、最初の報告は、香港中文大学の陳氏による「香港地方文献数碼館蔵」という報告で、香港中文大学と香港公共図書館が共同で、香港の図書館を対象に行ったアンケート調査をもとに、香港の図書館、アーカイブ、博物館が行っているデジタル化の状況を纏めたものであった。この報告によれば、香港には100個以上のデジタル・コレクションがあるという。その多くは現代香港政治、香港史関係あるいは大学の学術論文などのアーカイブであるが、なかには中国関係のものもあるという。詳細なリストは、プロシーディングスに公開されている。続いてマカオ大学図書館副館長の王氏より「マカオ図書館のデジタル化資源状況」と題する報告が行われ、マカオにおける資料デジタル化の状況が解説された。マカオ大学の古典籍デジタル化と新聞のデジタル化、チラシデータベース、アーカイブの電子目録、筆者の運営する「マカオデジタルリソースネット」の紹介などがあった。その後、ベルリンのドイツ国家図書館のシーボルト氏により、ドイツとEUにおける中国語文献のデジタル化の状況が紹介された。コーヒーブレイクの後、第3セッションが始まった。中央研究院の陳氏と李氏によって、台湾の国歌デジタルアーカイブプロジェクトの概括的な紹介が行われた。印象的だったのは、台湾ではデジタルアーカイブの産業・商業面での応用を進めていることで、古代の文物が、記念品や家電のデザインに使われているという。続いて、台湾の国家図書館の館長である顧氏より、「数位資源的典蔵管理與知識服務」と題する報告が行われ、国家図書館のデジタルリソースの概観及び、マネジメントシステムの紹介が行われた。

 4日午前も同じく「第八次中文文献資源共建共享合作会議(第8回中国語文献資源共同構築・シェアリング会議)の続きが開催されたが、既存及び目録関係が中心の報告であったので、ここでは省略する。5日、6日は中央研究院近代史研究所図書館にて、教育史に関する史料調査を行った。また近代史研究所に滞在する日本人客員研究員と、史料状況及び台湾の学術状況について意見交換を行った。

中国共産党中央文献研究室との交流

    中国共産党中央文献研究室一行(総勢14名)が、2010年9月12日に当資料室を訪問しました。現代中国地域研究プログラム及び当資料室の紹介、日本における中国研究の現状などについて意見交換等を行い、書庫見学を実施しました

2010年夏期・京都出張

【期間】2010年9月8日〜2010年9月9日

【地域】京都市

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 京都大学地域研究統合情報センターで開かれたワークショップ「実データ(史資料)にもとづく海域アジア交流の時空間ネットワーク」に参加した。

ワークショップでの発表者は、飯岡直子氏、石川亮太氏、村上衛氏で、共に東シナ海・東南アジア経済史の立場から、自分の研究のバックグラウンドや研究で用いているデータの内容が詳述された。その後、柴山守・関野樹氏から、時空間検索システムのツールとして、新たに開発されたGT-Time/GT-Mapの紹介が行われた。最後の自由討論のなかで、出張者が史資料中に存在する時空間データをコンピューターを用いて大量に処理するという、新しい研究手法による複数の研究発表に対して、歴史研究者と史料のコンピューター処理経験者という2つの立場からコメントを行った。このワークショップは、性格としてはブレーンストーミングあるいはキックオフミーティングに近く、全体的にいえばまだまだ完成というレベルには遠いが、日本では未発達のデジタルヒューマニティーズの実践として、貴重な場であった。また個人的な感想ではあるが、時空間情報の取り扱いについては、書誌データなどを活用することで、出版史や思想史分野でも新境地が開けるのではないか、と考えたことを附記しておく。

2010年夏期・北海道出張

【期間】2010年8月8日〜2010年8月14日

【地域】北海道

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 小樽商科大学で開催された旧植民地資料所蔵機関によるワークショップに出席した。
 本ワークショップは、旧植民地関係資料の所蔵機関によって、毎年輪番で開催されているもので、今年は小樽商科大学資料展示室オープンに併せ、「小樽商科大学の歴史へタイムスリップ」と称されて開催された。ワークショップは、8日午後から開始されたが、出張者は8日午後に東京で編集会議があったため参加できず、9日朝から参加した。

 8日午後のセッションは、「東アジアと北海道の高等教育史」と題され、北海道の高等教育機関の資料から、戦前北海道とアジアの関係史に関する報告が為されたが、9日午前のセッションは、「小樽商科大学における資料の収集整理保存」と題した、大学アーカイブにおける実務経験を中心としたセッションであった。最初の報告は、山畑倫志氏より「小規模アーカイブズにおける資料整理と検索システム」と題した報告がなされ、小樽商科大学百年史編纂室でのアーカイブ資料整理と検索システム構築についての発表がなされた。その後、筑波技術大学の高岩義信氏より「研究資源資料の保存」と題され、研究記録を残す意義と必要性が主張された。司会の川島真氏がコメントしたように、研究資料を残しておくことがアカウンタビリティを担保することになるという点は、いわゆる「文系」の研究者にはむしろ刺激的な話であった。その後、「北海道大学大学文書館における大学公文書選別作業について」という井上高聡氏の報告があり、最後に、加藤聖文氏より「大学アーカイブズにおける資料の収集と公開」と題された講演が行われ、大学アーカイブの特徴(具体的な対象資料、卒業生の組織化、図書館や博物館との違い)、アーカイブズの公開と法的な問題などについての報告がなされた。

 9日午後は、公文書管理について詳しい日本経済新聞編集委員の松岡資明氏が「日米密約だけじゃない 国民は知らないことだらけ」と題した講演を行った。公文書管理法の制定の経緯とその意義、さらに将来的に「知の基盤」はどうつくるのか、という点にまで話が進み、人材の養成と連携が重要ということで、国立国会図書館の日中韓デジタル図書館協議会や人間文化研究機構の資源共有化システムが具体例として出された。最後に、新設された小樽商科大学資料展示室を皆で見学した。10日からは、小樽商科大学図書館、北海道大学図書館などで日本の中国研究に関する史料調査に従事した。

2010年春期・京都出張

【期間】2010年6月2日〜2010年6月3日

【地域】京都市

【出張者】大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)

【概要】
 京都大学における資料デジタル化の状況を調査するとともに、あわせて博士論文執筆に関係する資料調査を行った。

2009年度における調査・交流活動

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2008年度における調査・交流活動

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2007年度における調査・交流活動

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