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研究・調査活動―シンポジウム・ワークショップ

「公開ワークショップ―中国社会科学院経済研究所の経済史研究者を囲む会」

・日時:2007年10月19日(金) 18時〜20時
・会場:明治大学駿河台キャンパス研究棟2階第8会議室
・報告者と報告テーマ:

武力(中国社会科学院経済研究所研究員)
「最近の中華人民共和国における現代中国経済史の研究ー久保亨主編『1949年前後の中国』の批評を通して」

報告概要
    まず、武力氏のほか、同行の3名の中国社会科学院経済研究所の研究員が自らの研究テーマと経済研究所経済史研究グループの紹介を行ったうえで、当資料室構成メンバーである久保亨氏が主編をつとめた『1949年前後の中国』(汲古書院)への批評を通して、中国の近現代史研究の状況を簡単に紹介していただいた。

 武氏は、まず『1949年前後の中国』に対して、大きな興奮と驚きを覚えた、とし、清末という後期帝制中国から現代というマクロなパースペクティブとミクロな歴史実証分析を組み合わせたことで、単なる歴史研究ではなく、現在や将来を見ることにもつながっていると評価した。
    また、武氏は現代中国の制度の多くが過去の歴史的遺産を継承することで形成されていったにもかかわらず、これまでは政治的イデオロギーや社会主義文化パラダイムといった要素から、中国近現代史研究の分野では、断絶性が強調され、連続性についてはあまり研究されてこなかったことを指摘した。そのため、人民共和国期の基層社会の統合や人々のネットワーク形成は清代からの連続性で考えられるべきであると述べた。すなわち、不安定な血縁関係などを基礎とした従来の私的な社会保障のシステムに対して、中華人民共和国政府が、公的な社会保障のビジョンを示したことが政権の求心力の一つであったこと、また清代以来の人々の社会関係やネットワークの連続性から1950年代の中国を考えるべきであり、農業集団化も大躍進による大飢饉がなければ、また違った評価になっただろうと述べた。
    また、政治制度や民主主義といった問題は社会経済の発展との関係で考えられるべきであり、西洋の市場経済を基礎とした自由主義、社会主義、伝統社会といった要素が混じりあったのが、近代中国そのものであるという観点に賛成したいと述べた。
    最後に、中国研究者を惑わせるものは、実体と制度、実体と統計数字の乖離であるが、これは表面のみで実体をきちんと見ないために発生する問題であり、歴史的な視点は実体を捉えるのに一つのよい方法であり、また研究には大きな観点のなかで一つ一つの小さな問題が、大きな問題の中でどのような位置にあり、他の要因とどのようにリンクしているのかを捉えるというのも一つの重要な方法であると指摘した。

    質疑応答では、費孝通についての評価、また1945年から49年の、いわゆる「戦後内戦期」をどうとらえるべきかという質問が出された。これに対して、武氏は、社会経済の安定・発展よりも国家の安全保障を重視するという新政権の観点が、費孝通や梁漱溟といった社会経済の安定・発展を主張した学者たちを「改良主義」と断罪したため、1950〜60年代には彼らの観点や思想が生かされなかったと述べた。

報告者紹介
武 力(WU Li)…

1956年生まれ。1984年中国人民大学中共党史系修士課程修了。同年中国社会科学院経済研究所入所。現在、同所現代経済史研究室主任。
林 剛(LIN Gang)
中国社会科学院経済研究所研究員
徐 建青(XU Jianqing)
中国社会科学院経済研究所研究員
封 越建(FENG Yuejian)
中国社会科学院経済研究所研究員

文責・
大澤肇(人間文化研究機構/東洋文庫)
薛軼群(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

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